幸せを探して
次の日。



あんな出来事があったのにも関わらず、私は学校へ登校していた。


とはいっても、目の周りは真っ赤に腫れ、目は充血している。


昨日何が起こったのかは、私の顔を見れば一目瞭然だった。


斎藤君は、私の赤く腫れた目の周りを見た途端に近付いてきた。


「…なあ…その目」


「ん?」


私は斎藤君の方を向き、笑った。


ぎこちなさがにじみ出ている笑顔。


「どうしたの斎藤君?」


この対応で、私が斎藤君を寄せ付けないようにしているのは、誰が見ても分かりうることで。


「あっ…いや、何でもない」


斎藤君は下唇を噛み、私に背を向けて歩き去った。



(これでいいの)


私は、何度も何度も自分に言い聞かせる。


わざと嫌われればいい。


斎藤君が、もっと私のことを嫌えば。


そうしたら、誰も私の過去を知らなくて済むから。



4時間目の少人数の数学の授業で、小テストが実施された。


とはいっても本格的なテストではなく、先生の指示で生徒が丸つけをするテストだった。



「はい、皆終わったー?」


中山先生という可愛らしい女の先生の声に、皆はばらばらに頷く。


「それじゃあ、解答配ります…あれ?」


中山先生が首を傾げる。


「解答、職員室に忘れてきちゃった…。まあいいや、大問の1だけ解いたら職員室に行こうかな」
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