幸せを探して
その日、学校で私の目の事について聞いてきたのは、愛来しかいなかった。


「美空ー、その目どうしたの?」


終学活直後、掃除をする為に椅子を机の上に上げていた私の肩を軽く叩きながら愛来が聞く。


「えっ…と…」


(ここで言葉を詰まらせちゃ駄目)


「き、今日返された数学の小テスト、点数悪くてさ!」


咄嗟に嘘をつく。


「嘘つけー!美空、バレバレだよ」


愛来は上目遣いで私を見上げる。


「だって、今日の朝から目が赤かったじゃん!テスト返されたの4時間目だよー?」


私は自分のミスに言葉を無くす。


陸人の症状を思い出し、何も考えずに言ってしまった。


どれだけ分かりやすい嘘をついてしまったんだろう。


「っと…昨日の夜、ドラマ見てたら感動しちゃって…泣いたんだ」



ドラマは嘘だけれど、泣いたのは本当だ。


嘘と本当をひっくるめて話している自分が怖く感じる。


けれど愛来は、本当の話だと思ってくれたようだ。


「なーんだ、そうだったの」


と、安心したように笑い、次の瞬間声のトーンを落とした。


「美空、このごろ悩んでない?」


「はい?」


何を言い出すんだろうと首を傾げる私をよそに、愛来は至って真剣な表情だ。
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