別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
部屋に戻って、浴衣姿で座椅子に座っている秋の姿に胸を撃ち抜かれた。

「あ、おかえり。
気持ちよかった?」

こちらを見た秋もまた、目を見開いて口に手を当て、顔をそらした。

「やばい。セクシーだな」

「…私も思った」

なんとなくお互い目を合わせられずに気まずい雰囲気だ。

「…加奈、おいで」

照れくさそうに秋が手招きする。

そばに寄ると、腕を引っ張られて秋を跨いで向き合う恰好になって座った。

そのまま後ろ頭を抱かれ、とろけるようなキスを何度も交わした。

唇が離れ、秋がはにかんで笑う。

「…なんかいいな、こういうの。
今までインドアカップルだったもんな」

「そうだね。
そういえばあんまり旅行ってしたことないね」

私も照れ臭くて小さく笑った。

こんなシチュエーションはなかなかないから、なんだか新鮮でくすぐったい。

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