別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「さて、露天風呂に入ってみようか」

夕食のあと、秋は何の躊躇いもなく浴衣の紐をほどき始める。

浴衣を脱いだ彼は、普段運動していないはずなのに身体のラインが引き締まっている。

いつも私を抱いてくれる腕にも逞しい筋肉がついているし、腹直筋にもちゃんと割れ目が入っている。

外食も多いし自炊もろくにしてないのに、どうしてなんだろう。

髭が生えないのと同じで体質的なものなんだろうか。

外へのガラス戸を開けながら、秋が問いかける。

「加奈、脱がないの?」

「脱ぐけど…電気消えないのかな」

「部屋の電気は消せるけど、紅葉がライトアップされてるんだから暗くはならないだろ」

秋が意地悪にニヤリと笑う。

それでも恥ずかしくて躊躇っていたら、どうやら寒かったらしく、秋はさっさと湯舟に浸かった。

「早くおいで」

「うん…」

意味がないと知りつつも、秋の死角で服を脱ぎ、胸の部分を手で隠して私も静かに湯舟に足を入れる。

そのまま胸まで沈めたら、溢れたお湯が豪快に湯舟から流れていった。

もったいないけど、なんだか贅沢な気分だ。

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