別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
秋の部屋のベッドはスプリングがきいていて、自分の部屋のベッドよりもずっと心地いい。

甘い余韻に浸りながら息を整え、熱くなった秋の肩におでこをくっつける。

さっきは寒いくらいだったのに、今は暑くて秋の身体は少し汗ばんでいる。

さっきまで肩で息をしていた秋ももう落ち着いた様子で、私の髪をなでながら静かに問いかける。

「…なあ、加奈。
温泉のときも思ったけど、ずいぶん痩せた気がする。
本当に大丈夫なのか?」

脱衣所にある体重計には気が向いたときにたまに乗るけど、そこまで痩せてはいない。

せいぜい3キロくらいだ。

「食べてないイメージで見てるから痩せてるように感じるだけだよ。
同期会したときはけっこう食べたし。
ほどよくメリハリつけないと太っちゃうからね」

「…もうちょっと太ってたほうが抱き心地がいいんだけど」

ふふっと笑って秋の胸に顔を埋める。

秋に心配をかけたくない。

かけている場合じゃない。

だけど、最近食が細くなっただけじゃなくて、時々胃も痛い。

胃薬でも買ってこなきゃだめかな。

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