別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
土曜日だからか1階の学食しか開いておらず、せっかくだからここで何か食べて帰ろうという話になった。

当時の定番はカレーライス。

ボリュームがあるのにワンコインだったため、学生に大人気だった。

秋はもちろんカレーを頼んだけど、私はそこまで食欲がなく、うどんにした。

「…加奈、またけっこう残してる。
朝も食べてないのに」

「…あんまりお腹が空かない時だってあるでしよ。
最近の秋はちょっと過敏すぎるよ。
そういうこと言われるとご飯のたびに秋の反応を気にしなきゃいけなくなっちゃう」

少し厳しい言い方をしたら、秋は言葉に詰まり、「ごめん、そうだよな」と申し訳なさそうに呟いた。

こんなことを言うのは秋に悪いけど、食べろとプレッシャーをかけられるとますます胃が痛くなる。

今はこの時間を純粋に楽しんでいたい。

腹ごなしにあてもなくキャンパス内を探索した。

講義で使ったことがない建物もあるし、裏手に回ればサークルで使っているらしいスポーツセンターも見つけた。

懐かしさと共に今さら新たな発見をして興奮しながら、キャンパスを出た。

「懐かしかったね。
きっともう二度と来ることはないだろうね」

「そうだなあ。用事がないもんな」

門を抜けて一度建物を振り返る。

無理やり連れてきたようなものだったけど、秋が意外と喜んでくれたようでよかった。

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