別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
差し込む光が眩しくて瞼を開いたら、すやすやと寝息を立てる秋の姿が映った。

いつもと同じあどけない寝顔。長いまつ毛が揺れる。

胸に顔を埋めると、やっぱり秋は夢の中にいても癖のように私の背に腕を回す。

身体が気だるいのは、きっといつもよりたくさん愛してくれたからだろう。

もうじゅうぶんだ。

私は幸せすぎるくらいの幸せをもらった。


いつも通りトーストにコーヒーの朝食をとり、BGMのようにテレビをつけながら少しの間待ったりと過ごす。

「このコーヒーの粉美味しかったな」

「そうだね。ちょっと高めだけど、お店で飲むみたいな味だったね」

「もうなくなるから、同じの買ってこようか。
加奈のシュガーシロップもそろそろなくなるよ」

「…うん、そうだね」

シュガーシロップなんてもういらないんだよ。

秋はブラックで飲めるから。

ほんの数日先の話すら、もう叶わない。


< 136 / 179 >

この作品をシェア

pagetop