別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
駅の近くに路駐をして、警備員が見張っていないことを確認しながらハザードを光らせ、路肩に車を寄せる。
「じゃあ、またな」
いつも通りに微笑む秋。
私はもう『またね』とは言えない。
心を落ち着かせるために、長く細い息を吐いた。
「…ねえ秋」
「ん?」
「昨夜は最後にするつもりで秋の部屋に行ったんだ。
だから、ごめんね。もう別れよう」
「え?」
俯いている私には、秋がどんな顔をしているのかはわからない。
だけど、声が戸惑っているのは確かだ。
胸がズキンズキンと鼓動に合わせて軋む。
顔を上げ、精いっぱい笑顔を作った私の目には、もう涙が浮かんでいた。
「さよなら」
「…加奈っ?」
秋の声を背にドアを閉めて、駅まで駆けた。
路駐をしておくわけにいかない秋は降りて来られない。
息を切らしながら改札を抜けて、滑り込んできた電車に飛び乗った。
最後に見た秋の顔が笑顔じゃなかったこと。それだけが心残りだった。
新しいアパートの最寄り駅に着くと、駅の隅には友香と葉山の姿があった。
「友香…来てくれたの?」
友香は泣きそうな顔をしながらにこりと微笑み、私を抱きしめてぽんぽんと背中を叩いた。
「頑張ったんだね」
友香の温もりに涙が溢れ出す。
もう限界だった。
人通りの多い駅の隅で、私は友香の腕の中で子供みたいに声をあげて泣いた。
「じゃあ、またな」
いつも通りに微笑む秋。
私はもう『またね』とは言えない。
心を落ち着かせるために、長く細い息を吐いた。
「…ねえ秋」
「ん?」
「昨夜は最後にするつもりで秋の部屋に行ったんだ。
だから、ごめんね。もう別れよう」
「え?」
俯いている私には、秋がどんな顔をしているのかはわからない。
だけど、声が戸惑っているのは確かだ。
胸がズキンズキンと鼓動に合わせて軋む。
顔を上げ、精いっぱい笑顔を作った私の目には、もう涙が浮かんでいた。
「さよなら」
「…加奈っ?」
秋の声を背にドアを閉めて、駅まで駆けた。
路駐をしておくわけにいかない秋は降りて来られない。
息を切らしながら改札を抜けて、滑り込んできた電車に飛び乗った。
最後に見た秋の顔が笑顔じゃなかったこと。それだけが心残りだった。
新しいアパートの最寄り駅に着くと、駅の隅には友香と葉山の姿があった。
「友香…来てくれたの?」
友香は泣きそうな顔をしながらにこりと微笑み、私を抱きしめてぽんぽんと背中を叩いた。
「頑張ったんだね」
友香の温もりに涙が溢れ出す。
もう限界だった。
人通りの多い駅の隅で、私は友香の腕の中で子供みたいに声をあげて泣いた。