別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
秋の住まいは何度見ても慣れないタワーマンションの高層階だ。
エントランスを抜ければホテルのロビーのようになっている。
もう夜10時なのに、カウンターにはコンシェルジュがいて、丁寧に「おかえりなさいませ」と頭を下げる。
大学時代、秋は築30年のアパートで暮らしていたし、ごくごく一般的な家庭に生まれた庶民なのだと思っていた。
母親は亡くなったと聞いていたけど、父親は普通のサラリーマンだと思っていたのだ。
だから、大学院を卒業してこのマンションへ引っ越すことになったときは驚いた。
秋が『Ra-Ra』の御曹司だと知らされたのはその時で、引っ越しの手伝いに来ていた晴くんに初めて会ったのもその時だ。
仮にも御曹司なのにどうして学生時代あんなところに住んでいたのか今でも疑問だけど、こんな立派なところに住みかえても、秋の生活スタイルは当時と大して変わっていない。
そういう秋の素朴さが私にとっては安心できるところであり、長く付き合いが続いている理由の一つでもあると思う。
エントランスを抜ければホテルのロビーのようになっている。
もう夜10時なのに、カウンターにはコンシェルジュがいて、丁寧に「おかえりなさいませ」と頭を下げる。
大学時代、秋は築30年のアパートで暮らしていたし、ごくごく一般的な家庭に生まれた庶民なのだと思っていた。
母親は亡くなったと聞いていたけど、父親は普通のサラリーマンだと思っていたのだ。
だから、大学院を卒業してこのマンションへ引っ越すことになったときは驚いた。
秋が『Ra-Ra』の御曹司だと知らされたのはその時で、引っ越しの手伝いに来ていた晴くんに初めて会ったのもその時だ。
仮にも御曹司なのにどうして学生時代あんなところに住んでいたのか今でも疑問だけど、こんな立派なところに住みかえても、秋の生活スタイルは当時と大して変わっていない。
そういう秋の素朴さが私にとっては安心できるところであり、長く付き合いが続いている理由の一つでもあると思う。