別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
しばらく顎に手を当てて宙を見上げていた瑞樹が、俺に顔を向ける。
「よくわかんねえけど…
もし加奈ちゃんに他に好きな男ができたとかじゃないなら、結婚に踏み切らないお前に嫌気がさしたとか?」
「結婚?」
確かに、同じ時期に付き合い始めた瑞樹と菜乃ちゃんはこの春結婚した。
もうすぐ子供も生まれる。
合コンの幹事だった恵理ちゃんも結婚が決まったのだと、この前加奈が言っていた。
「…だけど、加奈はまだ大卒2年目だ。
俺もまだ20代だし、嫌気がさすほど結婚を待っていたとも思えない」
「まあな。ウチの場合、菜乃の就職先がけっこうブラックで辞めようか悩んでたのと、俺が横浜に転勤になるのが重なったから、タイミングが合って結婚したってのもあるからな」
加奈は瑞樹たちの結婚式の時、結婚願望はまだあまりないと言っていた。
菜乃ちゃんに聞かれて即答していたから、嘘ではないと思う。
俺はまだ平社員だし、せめてもう一段階上に上がるまでは、口約束はあまり誠実じゃないと思っていた。
「…あと考えられるのは、マンネリか?
5年も付き合ってるわけだし」
「マンネリ…」
結婚よりも、そっちのほうがあり得るしれない。
だけど、専務になったら一緒に暮らそうという話をしたとき、加奈は泣いて喜んでいたじゃないか。
…いや、泣いていただけだ。
本当に喜んでいたのかどうかはわからない。
理由なんて何一つ聞けないまま、加奈は去っていってしまったのだ。
「よくわかんねえけど…
もし加奈ちゃんに他に好きな男ができたとかじゃないなら、結婚に踏み切らないお前に嫌気がさしたとか?」
「結婚?」
確かに、同じ時期に付き合い始めた瑞樹と菜乃ちゃんはこの春結婚した。
もうすぐ子供も生まれる。
合コンの幹事だった恵理ちゃんも結婚が決まったのだと、この前加奈が言っていた。
「…だけど、加奈はまだ大卒2年目だ。
俺もまだ20代だし、嫌気がさすほど結婚を待っていたとも思えない」
「まあな。ウチの場合、菜乃の就職先がけっこうブラックで辞めようか悩んでたのと、俺が横浜に転勤になるのが重なったから、タイミングが合って結婚したってのもあるからな」
加奈は瑞樹たちの結婚式の時、結婚願望はまだあまりないと言っていた。
菜乃ちゃんに聞かれて即答していたから、嘘ではないと思う。
俺はまだ平社員だし、せめてもう一段階上に上がるまでは、口約束はあまり誠実じゃないと思っていた。
「…あと考えられるのは、マンネリか?
5年も付き合ってるわけだし」
「マンネリ…」
結婚よりも、そっちのほうがあり得るしれない。
だけど、専務になったら一緒に暮らそうという話をしたとき、加奈は泣いて喜んでいたじゃないか。
…いや、泣いていただけだ。
本当に喜んでいたのかどうかはわからない。
理由なんて何一つ聞けないまま、加奈は去っていってしまったのだ。