別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー

午後から仕事があるから、瑞樹とは早々に別れた。

もちろんそれどころではないけど、穴を開けるわけにはいかない。

半分上の空だったかもしれないけど、なんとか仕事をこなした。

退勤後、会社から加奈のアパートへ車で直行する。

部屋の前まで行って見慣れない袋がドアにかかっているのに気づいた。

『新しい入居者の方へ』

そう書かれた水道局の案内だ。

ますます頭が混乱して、しばらくその案内を呆然と見つめた。

電話は何度かけても、相変わらず無機質な女性の声が流れるだけだ。


眠ることもできないまま迎えた翌日、始業の時間になっても加奈は現れなかった。

「水原さんは病欠です。
ちょっと長引くかもしれないからそのつもりで」

事務的な室長の言葉に、絶望的な気持ちになった。

確かに体調は崩していたけど、病院へ行ってだいぶ良くなったように見えた。

それなのに、長引くって一体どういうことなんだ。

何か深刻な病気でも…