別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「加奈はどこだ」
廊下の壁に晴の背を叩きつけて問い詰める。
「…俺も居場所は知らない」
顔を逸らした晴の心情は読み取れない。
「でも、お前が俺と加奈の見張り役をしてたのは確かなんだろ?」
なんでだよ…っ母さんのことでは、お前も父さんを恨んでたじゃないか!」
晴は大きな息を逃して俯いた。
「加奈ちゃんは、好きな人が結婚してしまうのを見たくないって言った。
それは俺も同じだ。
俺が兄貴と加奈ちゃんに協力すれば、2人はうまくいって結婚できるかもしれない。
だけど、そしたら俺は…好きな女が結婚して幸せになるのを、義弟として目の当たりにすることになる。
そんなのは耐えられなかった」
「晴…」
愕然として言葉を失った。
考えもしなかった。
冗談じゃなく、晴が加奈を本当に好きだっただなんて。
晴には特定の彼女が長い間いなかったはずだ。
いつから…
「ごめん、兄貴。
手続きは代理人が全てしてくれたし、俺も加奈ちゃんを吹っ切るために連絡先は聞かなかった。
俺にももう連絡はつかない」
いつものんきに笑っていて、兄の俺にさえ掴みどころのないと思っていた晴が、こんなにも泣きそうに掠れた声をしている。
責め立てようなんて気持ちはもう出てこない。
廊下の壁に晴の背を叩きつけて問い詰める。
「…俺も居場所は知らない」
顔を逸らした晴の心情は読み取れない。
「でも、お前が俺と加奈の見張り役をしてたのは確かなんだろ?」
なんでだよ…っ母さんのことでは、お前も父さんを恨んでたじゃないか!」
晴は大きな息を逃して俯いた。
「加奈ちゃんは、好きな人が結婚してしまうのを見たくないって言った。
それは俺も同じだ。
俺が兄貴と加奈ちゃんに協力すれば、2人はうまくいって結婚できるかもしれない。
だけど、そしたら俺は…好きな女が結婚して幸せになるのを、義弟として目の当たりにすることになる。
そんなのは耐えられなかった」
「晴…」
愕然として言葉を失った。
考えもしなかった。
冗談じゃなく、晴が加奈を本当に好きだっただなんて。
晴には特定の彼女が長い間いなかったはずだ。
いつから…
「ごめん、兄貴。
手続きは代理人が全てしてくれたし、俺も加奈ちゃんを吹っ切るために連絡先は聞かなかった。
俺にももう連絡はつかない」
いつものんきに笑っていて、兄の俺にさえ掴みどころのないと思っていた晴が、こんなにも泣きそうに掠れた声をしている。
責め立てようなんて気持ちはもう出てこない。