別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
本来なら、謝らなければならないのは俺のほうだ。

だけどひよりさんは最後まで、あくまで自分が婚約を破棄したんだと見せかけるために俺に頭を下げてくれている。

会社同士の親交が、俺のせいで悪くならないように。

「…お前っなんてことっ…」

わなわなと震える榛名社長を素通りし、ひよりさんは部屋を出て行った。

声を荒げながら榛名社長はそのあとを追いかけた。

どうか彼女も大切な人を見つけてほしい。

その人と結ばれて幸せになってほしい。

心の底からそう願った。

父はどうしたらいいのかわからない様子で、扉の向こうと俺を交互に見ていた。

会社のことなんかどうでもいい。

大切な人を取り戻すために、俺は決意を持って立ち上がった。

「…婚約は白紙だ。クビでも絶縁でも好きにしろ」

立ち尽くす父を背に、俺は部屋を出た。


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