別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
いつものようにロッカーで時間を潰し、『終わったよ』とメッセージがきたところで通用口を出た。

外は刺すような冷たさの空気。

今日、初雪が降った。

積もらずにすぐ消えてしまったけど、これからますます寒い季節が来る。

本当に1年はあっという間だ。

ここ2,3か月は特に、めまぐるしく日々が過ぎて行った気がする。

だけど、大切なことにたくさん気づかされた数か月でもあった。

車は通用口のすぐそばに停まっていて、エンジン音ですぐにわかった。

「お疲れ様」

「お疲れ様。外寒いな」

エアコンを最大にしているけど、まだつけたばかりなんだろう。

外の気温とたいして変わらない。

「今日どうする?」

「久しぶりに『エトワール』に行きたいな」

「了解」

車はゆっくり発進し、見慣れた景色を通り過ぎていく。

私の好きなアーティストの曲をBGMに。

「…またこんなふうに、一緒に行けると思わなかった」

窓の外を見ながら呟いたら、秋の左手が私の右手をぎゅっと握りしめた。

「これからもいつでも行けるよ。
マスターが健在な限りね」

「そうだね」


静かに微笑み合い、私たちはマスターの笑顔に会いに向かった。




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