別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「秋さん?」

少し遠くから聞こえた女性の声に思わず振り返った。

俺は時々兄貴と間違われて声をかけられるのだ。

そこまで似ているとは思っていないけど、遠目で見るとそっくりらしい。

ただ、加奈ちゃんに一度も間違われたことがないのは切なかったけど。

駆けてきたのは見覚えのある女性だった。

とても綺麗な顔立ちの彼女は、俺の前で立ち止まると眉を寄せた。

「…申し訳ありません。人違いでした。でも…」

彼女は不安げな目で、少しだけ首を傾げて俺に問いかける。

「弟さん…晴さん、ですよね?」

ここでやっと思い出した。

兄貴の婚約者だった人だ。


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