別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「ひよりさん、でしたね。
突然おかしな手紙を渡して本当に申し訳ありませんでした」

謝る機会があるなら、誠心誠意謝ろうと思っていた。

俺が余計な手紙を渡したせいで、彼女は苦しい葛藤をしたかもしれない。

結果的に、彼女は自分の都合だと言って婚約を白紙撤回してくれたのだ。

「晴さんのおかげで、私も勇気が出せたんです。
会社の都合で嫁ぐのではなくて、大切な人を見つけて幸せになりたいと。
秋さんは、幸せになれましたか?」

「はい。全部ひよりさんのおかげです。本当にありがとうございました。
婚約を破棄したせいで、お父様にそうとう怒られたんじゃないですか?」

彼女はふふっと微笑んだ。

「そのくらいいいんです。
私は会社の縛りの中でも、足掻いていきます。
いつか幸せになるために…私は負けません」

強い決意を秘めた瞳が、凛とした姿が、俺にはとても意外に思えた。

お嬢様育ちの彼女を、失礼だけどか弱いイメージで見ていたのかもしれない。



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