別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
彼女は身体を傾けて、俺の後ろを覗き込んだ。

俺が引きずっているのは、青い大きなキャリーバッグ。

これからどこへ旅に出ようか考えていたところだったのだ。

「どこかへ行かれるんですか?」

「気分転換に、しばらく会社から離れて旅でもしようかと思っていて」

「そう、なんですか…
あの、晴さん…」

彼女はなぜか恥ずかしそうにモジモジして、覚悟を決めたように顔を上げた。

「私、あなたからの手紙を今でも持っているんです」

手紙…?

そんな大袈裟なものじゃない。

なるべく小さくたたまないとこっそり渡せないと思ったから、コピー用紙を切って使ったのだ。



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