別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
お昼はひとりで社食へ行った。

自分のデスクで静かに食べながら悶々と考えるより、賑やかなところにいたほうが気が紛れると思ったのだ。

だけど結局どこにいても同じようだ。

周囲の声がフィルターを通したみたいに遠く聞こえ、自分だけが離れ小島にいるような孤独感に襲われる。

「加奈?」

ハッとして顔を上げると、トレイを持った友香がテーブルの前に立っていた。

「友香、お疲れさま。偶然だね」

慌てて笑ってみせたけど、友香は笑顔を返してくれず眉をひそめている。

「…元気ないね、加奈」

「え、そんなことないよ。
ちょっと眠いだけ」

明るい声を出してみたけど、少し大袈裟だっただろうか。

友香は昔から人の気持ちに敏感で鋭い子だ。余計な心配をかけたくない。

「仕事忙しいの?」

「ううん。もう忙しい波は過ぎたんだけどね。
気が緩んだのかな」

腑に落ちない様子の友香に、愛想笑いを続けることくらいしかできることがない。

トレイの定食は全く箸をつけないまま冷めてしまっている。

これを見たから余計に友香が不審に思ったのかもしれないけど、どうも食欲がわかないのだ。

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