別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
店を出て私のアパートに着き、秋にそのまま駐車場で待っていてもらうよう伝えた。

階段を駆け上って部屋に入り、取ってきたのは水の入ったバケツだ。

わけがわからないといった様子で訝し気な顔をしている秋を尻目に、私は準備を始める。

「このくらいのなら、アパートの駐車場でやっても問題ないよね」

「何の話?」

私がカバンから取り出した100円ショップの袋の中身を見て、秋は予想通り困惑の表情を浮かべた。

「線香花火?なんでいきなり」

私はいたずらに笑ってみせる。

100円ショップでたまたま目にとまったのは線香花火の長細い袋だった。

季節はずれだけど、なんだか無性に秋とやりたくなったのだ。

もう2人で過ごす夏はめぐっては来ないから。

線香花火と一緒に買って来たライターは、思いのほかスイッチが重くてうまくつかない。

苦戦していたら「貸して」と秋が受け取り、あっさりと火をつけた。

線香花火に火をつけたら、すぐに先端が焦げて丸まりオレンジ色に光り始めた。

「ほら、秋も早くっ」

「はいはい」

はしゃぐ子どもとそれに付き合うお父さんみたいだ。


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