別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
19時すぎ、ロッカールームでスマホをいじっていたら間の抜けた着信音で阻まれ、秋からの『終わった』というメッセージが届いた。

急いでエレベーターを降り、社員通用口の外にある広い駐車場の秋の車を探した。

私が出てきたのがわかったようで、駐車場の奥のほうに停まっていた車がライトを光らせ、通用口のそばまで来てくれた。

「お疲れ様」

ドアを開けて車に乗り込む。

「お疲れ様。今日はいつもの店にでも行く?」

「うん、そうしよ」

私がシートベルトをしめたことを確認すると、他の人に見られないうちにすぐ車を発進させる。

青い光を放つパネルからは、朝とは違って今度は私の好きなアーティストの曲が鳴っている。

「この曲いいよな。
他はよくわかんないけど、これは好き」

「ふふっ。私の一押しだからね」

「音楽の趣味は合わないって思ってたけど、案外聴いてみれば合うもんなのかもよ」

「いや、秋の趣味は絶対私には合わない」

秋は、残念だと言ってクスクス笑った。


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