別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
夕方、通用口で葉山と待ち合わせをしていたらちょうどラインが鳴った。

葉山からかと思いきや、それは真衣からだった。

『葉山と結婚するってホント?三角関係?』

早くも真衣に知られてしまったのか。

この大きな会社で、一体どんな仕組みで噂話は広がっていくんだろう。

社内広報より早いくらいだ。

しかも同期の三角関係なんて、真衣にしてみればとても興味深いネタに違いない。

その辺の事情は友香に説明を任せることにしよう。

葉山のことに関しては、彼女である友香の口から説明してもらったほうが誤解がなくていい。

申し訳ないけど、『友香に聞いて』と全部丸投げした。

葉山がやってきて、一緒に警戒しながら正面入り口まで回ったけど、あの男はいないようだ。

どこかに隠れているんじゃないかと葉山はキョロキョロしながら歩いていたけど、これじゃ完全に葉山のほうが不審者だ。

「葉山、SPみたいになってる」

「まあ似たようなもんだろ。要人警護」

「私そんなVIP待遇なの?」

「友香の命令ならVIP待遇にするしかないだろ」

さっきまでシャキッとしていた葉山が、友香の名前を出した途端情けない声に変わる。

思わず吹き出して大笑いしてしまった。

結局例の人は現れず、安堵しながら自宅へ帰った。


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