別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
その夜、シャワーが終わってタオルドライをしていた時に着信音が鳴った。

画面に表示されたのは、見慣れた『秋』の文字だ。

単調に鳴り続けるスマホを人差し指でスワイプする。

「…もしもし?」

『もしもし、これから会えない?』

ダイレクトに耳に届く機械越しの秋の声は、無条件に私の胸をキュンと締め付ける。

「仕事終わったの?」

『ああ。もうアパートの前に車つけてるんだ』

「え…?」

少し戸惑った。こんなことは今までなかったのに。

「部屋でもいい?
お風呂上がりで髪の毛濡れたままで、外に出られないんだけど…」

『じゃあ今から行くよ』

電話を切って、濡れ髪を軽くとかして整えた。

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