別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「カンパーイ!」

ジョッキをぶつけ合って、ビールで喉を潤す。

個室になっている座敷の畳にあぐらをかき、ぷはあっと息を漏らす男性陣は、24歳にしてもう完全にオヤジのようだ。

隣に座っている葉山は、乾杯の一口だけでもうジョッキの半分近くを飲んでいる。

「葉山、飛ばすなあ」

「太るぞ?」

「それ最近みんなに言われるんだけど」

野村と松坂は情報システム部門で働いている。

各支店と本社とのシステムネットワークに障害が出てしまったら、店舗の運営も本社での売り上げ統計も成り立たなくなってしまう。

だから2人のいる部署はとても細かい作業をしていて、常に忙しいのだ。

「野村は彼女と続いてんの?」

「まあね。あっでも松坂には聞かないでやって」

「えっ松坂別れたの?」

「聞かないでやってって、別れたって言ってるようなもんじゃんかよー野村」

松坂はあきれ顔で答え、反撃のように私と真衣を交互に見てニヤリと笑う。

「江川と水原は?」

「きっ聞かないで!!」

大袈裟に両手で顔を覆う真衣に、松坂はざまあみろと言わんばかりに爆笑する。

「私もフリーのままだよ」

話を振られた手前、私もそう答えた。

「じゃあやっぱり合コンじゃない?
たまには一緒に行こうよ、加奈」

「私、合コンの雰囲気苦手なんだってば」

「そんなこと言ってるから彼氏できないんじゃん!」

アルコールが入ったせいか興奮気味の真衣に苦笑いをする。

秋と別れても合コンには行きたくないな。

あのノリはもう思い出すだけで疲れる。

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