別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「葉山、ありがとう」

「お前、こんなとこにひとりでいたらダメだろ。
危ないぞ。変な奴多いんだから」

顔をしかめる葉山の後ろからひょこっと顔を出した友香は、なんだか嬉しそうな様子。

「葉山、今ちょっとだけ頼もしくてかっこよかったよ」

「ホント!?」

「うん、ちょっとだけね」

「なんだよちょっとってー」

酒が入ってるからだろうか。

堂々とノロケを見せられている気がする。

だけど、葉山はいつも友香には言われっぱなしだと思っていたから、こんなやり取りを見て安心した。

「ていうか2人ともなんでこんなとこにいるの」

「加奈の様子がおかしかったから2人でしばらく見てたの」

様子がおかしい…?

いつも通り笑えていたはずだし、いつも通りしゃべれていたはずだし、ちょっとずつだけどお酒も飲んでいたのに。

戸惑って言葉に詰まる私に、友香はやさしく微笑む。

「嫌じゃなかったら、飲み直すの付き合うよ?」

友香にはなぜか全てお見通しのような気がして、弱っている自分が顔を出す。

少し鼻の奥がツンとするのを感じながら、こくんと頷いた。


< 92 / 179 >

この作品をシェア

pagetop