別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「中学、高校時代、さんざん加奈の恋愛見てきたんだからわかるよ。
なんなら、小学校の時憧れてた先生とかもね」

私は、彼氏はいないと友香にも嘘をついていた。

友香は『そっかあ。加奈かわいいのにもったないなあ』と言ってくれていた。

「…いるって知ってて、今までずっと知らないふりをしてくれてたの?」

「まあ、葉山には教えちゃったけどね。そこはごめん」

友香が葉山に目を向けると、それに応えるように親指を立てた。

「俺も誰にも言ってないから、心配しなくて大丈夫」

友香のやさしさに目が熱くなって、溢れた涙が頬をつたう。

「お、おい水原、泣くなよー」

「違うよ葉山。泣かせていいの。
きっと加奈はずっと泣くの我慢してたんだよ。
ご飯もろくに食べられないくらい」

あたふたする葉山を友香が制止する。

なんで友香にはわかっちゃうのかな。

「嫌だったら言わなくていいよ。普通に飲んで帰ろ。
でも、私たちに言えることがあるなら、なんでも聞くから。
あ、葉山がいるのがやだったら出てってもらうし」

「彼氏を追い出すのかよっ」

「あ、でもお金は置いてってね」

いつもの夫婦漫才みたいなやりとりに、涙を拭きながら笑みが零れた。

友香は私のために、葉山いじりをして笑わせてくれているんだろう。

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