世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
……なに、コレ。
なんのドキドキ?
「……そうだよ。高いんだから。追加料金発生しちゃうんだから」
「がめついなぁ。いくらだよ。試しに言ってみろ」
はは、と笑う樹。
そんな樹をあたしはじっと見つめて……ゆっくりと口を開いた。
「1泊5千円でここに泊めてくれない?」
「……は?」
あたしの言葉に、樹が驚きの表情を見せる。
まぁ、当たり前だけど。
「あたし行く所ないし、とりあえず3日間泊めてくれない?
そしたら、樹があたしに払うお金も少なくて済むしよくない?」
「よくない? じゃねぇよっ!!」
「お願いだから! 月曜の朝まででいいから! それに月曜も祝日だしいいじゃん!」
「何がいんだよ!」
「長い人生のたった3日じゃん!」
「たった3日でもなんでオレがおまえの言う事聞かなきゃなんねぇんだよっ」
怒鳴る樹に、あたしはゆっくりと俯く。
確かに……無理な話だとはあたしも思う。
でも……他に頼れる人なんて……
がっくりと肩を落としたあたしに、樹は顔をしかめていて……
あたしは小さくため息をついた。
「分かった。出てくよ。……駅前にいたらまたナンパされるかもだし。そしたらその人に泊めてもらう。……鼻ピでも蛍光ピンクでもおやじでも我慢する」
「……」
「本当はそんなの嫌だけど……そうだよね、樹にこれ以上迷惑なんか掛けられないもんね。
それは分かってたんだけど、樹ってなんか親しみやすくて……でもそうだよね。あたしなんかお金で雇われただけであって、樹はこんなあたしなんかを泊めたりしたくないよね……」
「……」
「さて、じゃああたしの最後の「女の子」の夜に乾杯……」
「分かったよ! ……もう好きにしろっ」
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