世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
「そんな理由かよっ
つぅか、何? 瑞希チャンはブラコンですか?」
「違うよっ!! ……血は繋がってないもん。
あたしが5歳の頃再婚して連れ子同士だから……血は繋がってないもん」
「……へぇ」
ソファの上で、膝を抱え込むように座る。
樹はキッチンの壁に背中を預けて、ビールを飲みながらあたしを見つめていた。
何も言わないのに、その空間はなんだか優しくて……促されてもいないのに、あたしは続く言葉を次々に口にする。
誰かに吐き出したくても吐き出せなかった気持ち……
1人で抱えるのはもう、つらかった気持ち――――……
「だってっ……本当に好きだったんだもんっ
お兄ちゃんとしてじゃないっ
男として好きだった……ずっとずっと一緒に居たかった。
お兄ちゃんだって……そう言ってくれてたのに――――…… 」
分かってた。
お兄ちゃんの言う好きと、あたしの言う好きが違う事に。
分かってた。
好きでいたって、報われない事なんて。
それでも……それでもどうしてもどうしても……
お兄ちゃんがあたしじゃない人を好きになるなんて嫌で……
お兄ちゃんの中で、あたし以上に大切な女が出来るのが嫌だった。
そうやって、あたしの順位がどんどん落ちていくのが嫌だった。
いつでも……
お兄ちゃんの一番大事な存在で居たかった――――……
「本気で好きだったの……」
でも、もう――――……
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