世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
樹は、ははっと笑って「引かねぇよ」と言いながら寝室のドアを閉めた。
少し悩んだけど、まぁ樹がいいって言うならいっか、なんて思って2枚の毛布に包まって幸せ気分に浸っていると……
『クシュッ……クシュン!』
「……」
それは隣の部屋から聞こえてきた樹のくしゃみ。
『……クシュン!』
「……」
あたしは暖まってきた身体を起こすと、毛布を持って寝室のドアを開けた。
真っ暗だったけど、目が慣れていたせいでなんとなく部屋の中が見える。
リビング同様、物のない部屋が。
「なんだよ、夜這い?」
「これ、やっぱりいいよ」
「いいから遠慮すんなって」
「遠慮はしてないけど、このせいで樹が風邪引いたらあたしの後味が悪いんだよね」
あたしの言葉に、樹は「そりゃそうか」と納得して……そして言葉を返した。
「でも、オレも瑞希が風邪引いたら後味悪いんだけど」
……やっぱり樹っていい奴だな。
あたしなんか無理言ってここにいさせてもらってるのに、そんなあたしの心配なんかして。
騙されやすい性格だな、きっと。
……人の事言えないけど。
「いいよ、あたしの事なんか心配しなくても」
「心配とかじゃなくて、オレの男のプライドが……」
「男のプライドなんか尚更どうでもいいよ」
「あ、こら。ちょっと待て」
結局、話の決着は付く様子もなく。
ジャージだけで長話をしてしまったあたしの身体がぶるっと震え出した。
裸足で立ってるのも正直もうつらいし……
あたしは、チラっと樹のベッドに視線を移す。
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