世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
……樹なら大丈夫って思える。
泊まるのも、同じベッドに寝るのも……樹ならって。
うん。きっと樹なら大丈夫だ。
あたしの女の勘がそう言ってる。
それに何よりも当てになるもんでしょ? 「女の勘」って。
あたしの中の本能が、樹は大丈夫だって判断したって事なんだから。
その日、あたしは樹のぬくもりを感じながら眠りの世界へと吸い込まれた。
お兄ちゃんに似てるけど、でも違う、温かいぬくもり。
それを身体中に感じて、あたしは安心して意識を手放した。
両親は仕事中心の人間で。
そんな中で、唯一のより所はお兄ちゃんだった。
お兄ちゃんだって同じ立場のはずなのに、いつでもあたしを気遣ってくれて、優しくしてくれた。
お兄ちゃんがいれば、上手く笑えたし、優しい気持ちになれたんだ。
口げんかもいっぱいしたけど、それ以上に笑った思い出が頭を過ぎる。
そんなお兄ちゃんがいたから、あたしは今もこうして捻くれずに頑張れてるんだ。
「いや、十分捻くれてるけど?」
翌日の朝8時。
テーブルに並ぶのはチーズの乗ったトーストと、ハムエッグ。
デザートにはおいしそうなプリン……
そして、あたしの目の前には、寝癖も付いていない爽やかな顔をした樹の姿。
心なしかすっきりしている樹の表情に、あたしは自分の身体へと視線を落とす。
この素敵な朝食に、樹のあの表情……特に服は乱れていないけど、まさか?!
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