世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
ねぇ、樹。
あたしは誰にでもこんな事する訳じゃないって知ってた?
交わした口数は多かったけど、あたし達、あまり自分の事は話さなかったよね。
だから言わなかったけど……あたし、こんな風に男の人と手を繋ぎたいなんて思ったのは初めてだったよ。
こんな風に、触れたくなった相手は樹が初めてだった。
自然と……身体が求めるように手が伸びて。
それは、恥ずかしさとかを飛び越えた次元だった。
当たり前のように、繋がっていない2人に疑問が浮かんだんだ。
ねぇ、樹。
あたしは運命とか信じちゃう可愛い女じゃないけど……もしかしたらこれはそうゆう類のものだったのかな。
自然と伸びた手を繋げたのは……
誰にも見えない、赤い糸だったのかな。
なんて、今はそう思うよ。
そんなあたしの考えを知ったら、樹は笑うよね?
……笑ってよ。
『似合わねぇ』って。
『バカじゃねぇの?』って。
似合わない運命論を信じたあたしを、大げさに笑ってよ。
当たり前のように隣にいたのに……
3日間、同じベッドで眠ったのに……
それは全部嘘のように姿を消した。
あの部屋で樹と笑い合うことは、もうない。
あのベッドで月明かりに目を細める事は、もうない。
樹の匂いを吸い込んで安心して眠る事は、もうない。
ねぇ、樹。
樹に、会いたい。
誰よりも、誰よりも……お兄ちゃんよりも。
樹に会いたいよ。
ねぇ。
ねぇ……
※※※
「あ、コレ可愛い!!」
「……可愛い、か?」
「可愛いよ! 購入決定~」
食事を済ませた後のモール3階。
入った雑貨屋さんであたしが目を輝かせた先には、可愛いマグネット。
カラフルな花に、てんとう虫、虹に、星や月。
四葉のクローバーに、ハートやフルーツ。
1つ100円の安さもすごく魅力的。
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