世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
ねぇ、樹。
この時、もしも気持ちに気付いてそれを伝えられたら……今は変わっていたのかな。
今、もしかしたら、樹は傍に居てくれた……?
……気持ちに気付いていたからってそれを伝える事はできなかっただろうけど。
だって、あの約束があったから。
『オレの事好きになるなよ』
樹とした、たった1つだけの約束……それが、こんなにも簡単に破れちゃう事だったなんて……この時のあたしはまだ知らなかった。
※※※
「ほら、可愛いし」
買ってきたマグネットを冷蔵庫にくっつけて樹に見せ付ける。
無理矢理冷蔵庫前までつれてこられた樹は、表情を歪めて嫌そうな顔をした。
「可愛いけど……まぁ、可愛いけどさ」
見ているうちにまんざらでもなくなってきた様子の樹に、あたしはにっこり笑ってからソファに腰掛けた。
そして今日買い込んできた物をあさる。
「お菓子に、シャンプーにリンス、缶チューハイ……」
「ちょっと待て。なんでシャンプーにリンスなんか買ってる?」
「だって樹の使ったら髪がキシキシになっちゃったんだもん」
「3日くらい我慢しろよっ」
「はいはい。あ、あと林檎うさぎキーホルダー。可愛いでしょ。
なんかおまじない付きでね、これ持ってると新しい恋がくるらしいよ」
林檎の部分が金色の林檎うさぎを樹の目の前でぶらぶらと揺らす。
それを目で追いながら、樹が苦笑いを浮かべた。
「おまえ、おまじないとか信じるタイプか?」
「いや、信じない。だって可愛いと思ったらたまたまそんなおまじない付きだったから」
「女はみんなそうゆうの信じるもんじゃねぇの?」
樹が呆れながら言った言葉に、あたしは淡々と答える。
そんな可愛い女じゃない事は、もう十分分かってるし。
「どうだろうね。でもさ、こんなん持ってるだけで色々願いが叶うなら世の中の事全部が上手くいってるし。
そんな神頼みなんかしたって駄目なもんは駄目なんだってもう分かってる年頃だしね」
「まぁ……そりゃそうだな。オレもそう思う」
「けど……駄目でも、努力次第ではどうにかなる事はあるらしいね」
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