世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
なのに、なんで……っ
……ってゆうかなんであたしはこんなに熱くなって……
あれ……なんか……
「……気持ち悪い」
「は?!」
「うぅ……気持ち悪……」
「ちょっと待て! ほら、瑞希! こっち!!」
急に襲ってきた吐き気に、あたしは口を押さえまま樹にトイレへと引きずり込まれた。
「うぅ~……」
「大丈夫か?」
「ダメ、死ぬ」
「酒に酔って死ぬ奴がどこに……あぁ、いるか。まぁ、おまえは大丈夫だ。ほら、水飲め」
なんとか危機的状況は打破したあたしがソファにぐったりと横になっていると、樹があたしのおでこに水の入ったコップを当てた。
それが気持ちよくて……あたしはゆっくりと瞼を下ろす。
どうやらあたしを襲っていたお腹のムカつきは酔いからくるものだったらしい。
樹の話にじゃなかったのか……なんてはた迷惑な奴。
「あ、おい、こら。寝るな」
「樹……さっきはいっぱい色んな事言っちゃってごめん」
謝ったあたしに、樹がふっと笑みをこぼす。
「あぁ、別にいいよ。……まぁ、図星だから。結構キタけど」
図星だったからこそ、怒りたくなるものなのに。
それなのに、樹は怒る様子もなくあたしを許す。
そんな優しさに、胸が熱くなったのは……まだ残るアルコールのせいだろうか。
じわじわと目に浮かび上がる涙も、きっと出し切れてないアルコールのせいに決まってる。
「……瑞希?」
あたしの涙に気付いたのか、樹が少し落ち着いたトーンであたしを呼んだ。
その声が、またあたしの涙を誘う。
「おまえ結構泣き虫だな。あ、泣き上戸?」
「違うよっ……なんか樹が優しいから涙が出てくるんだもんっ」
「今にも吐きそうな奴にどうやって冷たくしろって言うんだよ。無茶言うな」
「あたしなんかほっとけばいいのに……こんなブラコン、わざわざ泊める事なんかないのに……挙句、説教までするような奴……樹はお人よし過ぎるよっ」
怒り出したあたしに、樹は「今度は怒り上戸か」なんて言って笑った。
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