世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
「……もしかして家出?」
別に隠す必要もなく頷くと、その人は少し間を置いてから話を続けた。
「おまえ親は? 心配とかしねぇの?」
「さぁ……多分しないんじゃない? こんなのあたしのわがままだと思ってるから」
「まぁ、家出はわがままな子供のする事だよな」
男の返答に頭に来て黙り込むと、また1人、おやじが話しかけてきた。
「お嬢ちゃん、1人? ……よかったら5万でどう?」
……5万。
魅力的な金額に一瞬心が揺らめくも……
「……無理。ってゆうか身体売るつもりはありませんから他当たってください」
「え~、そんな短いスカート履いて誘っておきながらそれはないんじゃない?」
「これ、制服でこの長さが規定ですから。文句なら学校にどうぞ」
「え~、こんな事してるの学校にバレたらまずいんじゃない?」
引き下がらないおやじに、隣の男に感じていたイライラがプラスされて爆発する。
「つぅかさ! あたしは座ってただけでしょ?! それなのに勝手に5万とか言って声かけてきたのはそっちじゃん。それを学校に言われたってあたしは痛くもなんともないんで是非ともクレームなりなんなり、言っちゃってください。
まぁ、問題になるのはおじさんでしょうけど。
結婚指輪とかしてるくせに、援交してるなんてサイッテー」
キっと睨みつけるようにおやじを見上げると、おやじはぶつぶつと文句を言いながらその場を去る。
「身上の人に向かっての口の聞き方がなってない」とか、そんな文句を並べながら。
さすがに、追っかけていってまで反論する気にもなれずに、あたしはその場でまたため息をつく。
行き場がないのは事実。
でもやっぱりあんなのは出来ない。
いや、あんなのとは出来ない。
今までしてきた相手だって本気で好きな訳じゃなかったけど……あたしにだって好みがあるんだ。
そりゃあ……タイプの男だったら5万もらえるなら……
うーん……5万……5万……
くだらない考えに首を捻っていると、まだ居た隣の男に再び声を掛けられた。
「おまえ、2万でオレの頼み聞いてくんない?」
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