世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】
林檎うさぎのキーホルダーに付けられた鍵……
この鍵は――――……
「大体……おまえオレの生活にずかずか勝手に入り込んできたくせに、別れ際だけあんな遠慮がちになんてありえねぇだろぉが。
おまえの事だからそのうちすぐ泊まりにくるなり、なんなりするかと思って……でも待ってみてもこねぇし……いつ来るか分かんねぇからドアに貼り紙までして……本当に勘弁しろよ」
「貼り紙って……?」
「……部活終わったらすぐ戻るから待ってろって」
ぶすっとして答える樹に、あたしは嬉しくて……でも、いつものような憎まれ口が口をつく。
「バカじゃん……そんなん貼っておいたら今は誰もいませんって言ってるようなもんだよ? 泥棒が入るよ。え……ってゆうか部活って……」
あたしの驚きを隠せない声に、樹が不貞腐れたまま頷く。
「おまえがけしかけたんだろ。ボロボロになるまでやれって。
だからまた走り出したのに、それを見てて欲しい誰かさんは一向にこねぇし」
「……これ、何の鍵?」
聞いたあたしに、樹が視線を合わせて……ゆっくりとあたしに近付く。
コツコツと靴を鳴らしながら近付いてくる樹に、胸がトクトクと心地いい緊張を弾き出す。
つま先同士がくっつくんじゃないかってほどの至近距離に、あたしはゆっくりと顔を上げた。
「……言わなきゃ分かんない?」
「……多分、分かる」
「じゃ、言ってみ?」
すごく近い距離での会話。
樹の声がものすごく近い位置から聞こえてきて……あたしの脳を軽く痺れさせる。
「……合い鍵?」
「そ。……その林檎うさぎのおまじない、本当だったな」
「あ……」
『恋を運んできてくれる』
タグに付いていた言葉を思い出して、あたしは樹を見上げる。
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