世界で一番欲しいもの【LOVEドロップス企画作品】


「すごい!」を連発しながら、トロフィーやらメダルを交互に眺めていると、樹がそれをあたしの手から取り上げた。

潜められた眉が、不機嫌を表している。


「いっつも2位。万年2位とか呼ばれたりしてたし。……意味ねぇよ、こんなもん」


視線を握り締めたメダルに落としながら淡々と述べられた言葉に、あたしは口を尖らせる。


「全国2位なんだよ!? すごいじゃん! 頑張ったって取れなかった人だっていっぱいいるんだから!」

「……まぁ、そりゃそうだけど。悔しいじゃん。ずっと2位だったなんて」


納得いかなそうにこぼした樹に、あたしは少し黙って頬を膨らませた。

そして……


「あ!じゃあさ……」


樹の持ったメダルを奪って、自分の鞄からデコ電用のシールを取り出す。

キラキラしたストーンシールをメダルに貼り付けて、樹を振り返った。


「これで優勝だね」


あたしの差し出したメダルに、樹は一瞬表情をしかめて……そしてふっと笑った。


「おまえ……それ、そのふざけたシール取れんだろぉな」

「いいじゃん。これで世界に1個だけのメダルだし」


準優勝の「準」だけをシールで隠したメダル。

カラフルに色付いたキレイなキレイな銀メダル。


なんだかおもちゃみたいになってしまったメダルに樹は笑って、調子に乗って賞状にもシールを貼ったところで、頭を小突かれた。





「可愛いじゃん……林檎うさぎって今流行ってるんだよ?」


あたしは賞状に貼ろうとした林檎うさぎのシールを指先につけながら不満を漏らす。


「なんだよ、それ」

「うわ~……知らないんだ! おじさ……いたっ! DVだし」

「瑞希が先にしたんだろ? 言葉だって立派なDVだし。……つぅか、DVってそんな関係じゃねぇだろぉが」


苦笑いしながらメダルのキラキラを見る樹に、あたしの胸が小さく波打つ。

それは、初めて呼ばれた名前のせい。

樹の低い声で呼ばれると、なんだかこそばゆくて不思議な感じ。

……なんかむず痒い。


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