《クールな彼は欲しがり屋》

冷蔵庫に冷やしておいたフルーツタルト。
取り出してからラップを外した。
昨日の夜に作ったもので、我ながら上出来の作品になった。

さっきレストランでデザートに出たチョコクリーム系のケーキを食べてしまったが、全く違う味だから問題ないはず。

量も少しだったし。

「ケーキ作ったの、白ワインもあるから」
右腕にフルーツタルトの乗った皿をレストランで働くホールスタッフみたいにして持ち、左手にはワイン、ワイングラスは指の間に挟んで持った。  

装飾は完璧に出来たし、手作りのタルトもうまく出来た。あとは....。

「手伝おうか?」
椅子から立ち上がろうとする健太郎。

「大丈っ、あっ、えっ!!」
健太郎に余裕の笑みを見せた時、腕のバランスが崩れた。

バランスを取り直そうとして、余計にゆらゆらしだすフルーツタルト。

「うわっ!」

ベタッ、ドサッ。

一緒固まって動けなくなっていた。

バランスを立て直そうと手にばかり意識を集中しすぎて足元がおろそかになっていたのだ。

キッチンの床に敷いていたラグに足を取られ、躓いて私は持っていたケーキを目の前にいた健太郎の顔に向かい放り投げていた。

見事、健太郎の顔に命中したタルト。

「健太郎~」

命中したタルトは、顔から滑り落ちて床まで落ちる前に健太郎が両手で受け止めてくれた。

もちろん、砕けて床へ落ちたタルトもあったが、大半を健太郎が手に受け止めてくれていたのだ。

「ごめん、健太郎っ!すぐに拭くもの持ってくるね」

大急ぎでキッチンへ戻ろうとした私。

せっかく、私もイブに何かしたくて、健太郎に喜んでもらいたくて家につれてきたのに。

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