《クールな彼は欲しがり屋》
 
二人で裸のまま、一枚の毛布にくるまりソファーに座っていた。毛布の中で触れ合った腕がくすぐったい。

壊れたタルトを乗せた皿を私が両手で持たされていた。

「また落とさないように、ちゃんと両手で持ってろよ」

「うん」

フォークでタルトをすくう健太郎。
「こりゃスプーンのが良かったか?」
粉々になったタルト生地。

比較的壊れてない部分を選びフォークに乗せて、健太郎は自分の口に入れた。

「うまっ!うまいよ、これ。ほら食べてみろ」
すぐに一口分すくって、健太郎は私の口の前に差し出した。

「あ~しろ、あ~……ん」
口に入ってきたタルトを咀嚼した私に
「うまいだろ」と言う健太郎。

「うん」

「もっと食べていいか?」

「うん、でも崩れてるから無理しないで。また、作るし」

私の言葉を待たずにムシャムシャと崩れたタルトを食べ、粉々になったタルト生地もお皿に口をつけフォークでかき入れてみせた健太郎。

「そこまでしなくても……いーのに」

本当は嬉しかった。
ぶつけたことも怒らず、粉々でも文句も言わずに綺麗に食べてくれた健太郎に感謝していた。

「そこまでする男だし、腹が減ったしな」
にっこり笑ってくれた健太郎が、素敵すぎて涙が出そうだ。こんなふうな笑い顔を見たら、私は健太郎をきっとどんどん好きになると思う。

腕を伸ばして健太郎に思い切り抱きついていた。

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