《クールな彼は欲しがり屋》

健太郎もそれに答えるように私を抱きしめる。

くるまっていた毛布が、はらりと下がる。
ゆっくりと毛布を私にかけてくれる健太郎。
私の額にキスをして

「寒いな。またベッドに戻る?」
と、優しく聞いてきた。


頷いてみせると、健太郎は私を毛布でくるんで軽々と抱き上げる。

ベッドに戻り、そっと私をおろした健太郎は、私の髪を撫でながら
「慶子、最高に素敵なイブをありがとう」
と言ってくれた。

「本当に?失敗ばかりのイブだったのに?」

「ちょっといい?」
私の首に冷たくてするっとしたものが当たった。

「何?」

「プレゼント」

指で触れたそれはネックレスのようだ。

「ありがとう、健太郎。嬉しい」

「最高に心に残るイブだ。さっきのラストクリスマスって曲は、俺も好き。どうして慌てて消したんだ?」


「だって、縁起が悪いから。最後のクリスマスだなんて」

「そうか?あの歌に『Now I've found a real love 』本当の愛を見つけたって歌詞がある。慶子のセレクトは間違ってないよ。今の俺に合ってる」

嬉しい。 
だが、健太郎は素敵というより、イケメンっぷりが出来過ぎてる。目に余る。

こんなにイケメンな彼氏で私はいいんだろうか。

健太郎のイケメンフェイスを眺め、
「やりすぎ」
と、注意した。

すると、毛布を指先で摘んでいた健太郎の手がピタリと止まる。

「やりすぎってほど、まだしてないだろ?」

「やだ、何勘違いしてんの?」

イケメンな彼氏は、戸惑いの表情を浮かべている。案外、出来過ぎてないのかもしれない。

まだまだ、恋愛マラソンは、続くはずだ。
戸惑ったり、勘違いしたり、泣いたり笑ったりしながら、自分のペースを見つけて進んでいきたい。

そうすれば、きっと……。


健太郎が差し出した手に私は自分の手を乗せた。

ここからは、2人で手を繫いで進める。それなら、だいぶ心強い。2人なら、高いハードルも超えられる。

そんなふうに考えられた。

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