《クールな彼は欲しがり屋》
「思い出したくないんです」
「あ?なんだと?」
沢田課長が怒ったような声を出した。
「だって初めて告白して初めて振られた日で、初めて....」
ヤバい。
思い出すと泣けてくる。
「私にしたら、あの夜だけの出来事にしたかったんです。それなのに、あの夜の人が、よりによって異動した先の上司だったなんて......恥ずかしくて」
沢田課長の眉間に皺が刻まれた。
「恥ずかしい?俺がか?」
怒らせたくなくて、慌てて両手を横に振り言葉を選びながら
「いえ....なんていうか....沢田課長がどうのこうのではないんです。そのぅ同じ会社の人だったっていう今の状況が、私的には、かなりショックでして」と自分の考えを口にした。
私の言葉に沢田課長は、表情を険しくした。
「ショック?俺と一晩一緒にいたことが嫌な思い出なわけかよ」
「そ、それは....昨日までは後悔してませんでしたが、こうなってみると....やっぱり軽はずみだったなって、今は後悔してます」
「あんたは、とにかく後悔してるって訳?」
ため息まじりに言う沢田課長。