《クールな彼は欲しがり屋》

次の店は、佐野さんが知っているお店だということで先に佐野さんと和泉さんが並んで歩いていく。

そのあとを優雅に歩く沢田課長。
そのまた少し後ろを私が歩いていた。

いつ話そう。今?

話しかけようかどうしようかと悩みながら沢田課長の背中を見て歩いていると、その背中がいきなり止まって振り返った。

「わっ!」
驚いた私を見て沢田課長は
「遅い。もっと速く歩け」と怒ったふうに言った。

「はい、わかってます」
早足になって沢田課長に追い付き、すぐに佐野さんの横を目指した。

すると、速く歩くために大きく振っていた腕を沢田課長にがっしりと掴まれてしまう。

「な、なんですか?」
びくついて答える私に沢田課長は
「やぼ」と一言だけ言って、前に歩く和泉さんと佐野さんを顎でしゃくって見せた。

「やぼ?え?」

和泉さんと佐野さんは、楽しそうに話している。まるで私達なんか初めからいなかったみたいに。

ん?
あれ、もしかして二人ってそういう関係?

改めてよくみると、二人は背格好的にもお似合いに見える。
年齢は、佐野さんの方が少し上だろうか。しっかりもので姉御肌の佐野さんと、のんびりして優しい感じのする和泉さん。性格的にも、お似合いと言えばお似合いだ。


「あの、二人は、そういう?」
異動してきたばかりの私には、二人の関係は良くわからない。
沢田課長の方が同じ部署の仲間として、人間関係は知っているはずだ。
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