《クールな彼は欲しがり屋》
男性とした経験がなく、今になって怖くなってきた。
と、告白した私は、ガタガタ震え号泣していた。
別に好きでもない人としても構わないつもりだった。
でも、いざキスして服を脱いでみたら、ふと悲しくなってきたのだ。
恋人でもない人と経験しても意味がない。する意味がわからない。
ただ、長い間好きだった人に振られた日に、やけになってすることだろうかって思ったら泣けたのだ。惨めでたまらなかった。
そんなことって思われるかもしれないが、私には大問題だと、ぐちゃぐちゃ言ったら、男は「初めて....か」と呟いた。
「わかるよ。怖いよな」
男は私をベッドにゆっくりと横にならせて、私の上に被さるようになった状態になった。それから「大丈夫」と言ってキスしてきた。
何が大丈夫なんだかわからない。大丈夫な訳がない。
キスをする理由もそれ以上する意味もわからなくなっていた。
涙でぐちゃぐちゃなのにって思って、私はキスをしながら迫ってくる男の背中に強く爪を立てた。
「いっ」
痛さに顔を歪めた男は、すぐに私の上からどいて、ベッドに横になり布団にくるまった。
「さむ~」と呟き「わかった。今日は無し」と言って私に背中を向けた。
私も寒くなって、しゃくりあげながら布団へ潜り込んで、勇気も決断力もない生真面目な自分に呆れていた。
男に背中を向け、色んなジレンマを抱えながら泣き続けた。
しばらくして、ベッドがきしみ、シーツがすれる音がして男が体の向きを変えたのがわかった。
男の腕がのびてきて、背中を向け丸くなっていた私を抱きしめた。はじめ驚いてびくっとなった。
「安心しろ。今日はなにもしないから。泣きたいだけ存分に泣け。あんたは明日から新しく生まれ変わればいい。それから....」
耳元で静かにゆっくりした口調で言われた。
背中からハグされるなんてことも初めてでドキドキものだった。でも、いつしかそれが心地よくなり、私は泣くのをやめて、うとうとし始め出していた。