《クールな彼は欲しがり屋》
「ふーん、でも、返事は早くした方がいいわよ」

「そうでしょうか?」

「タイミングって一度逃すと....取り戻せないもんだから」
どことなく、実感がこもった言い方に感じた。もしかすると、佐野さんにはタイミングを外した経験があるのかもしれなかった。

タイミング。

男女が付き合うタイミングなんて千差万別なんだろうけど、私は、まだ沢田課長が好きかどうかもわからない。

そもそも沢田課長は、私のどこを気にいったのたろう。

気にいってなんかなくで、ただ、中途半端にできなかった女に執着しているたけなんじゃないだろうか。

だから、実際の話、沢田課長は私と最後まで出来たら、それで満足してしまうんじゃないだろうか。

正式に付き合うとでも言っておけば、私が油断すると考えているのかもしれない。

冗談じゃない。

キスなんかされてドキドキしちゃったけど、それは相手が沢田課長だからって訳じゃない。

「まあさ、どっちでもいいんだけど。あの沢田課長が自ら春川さんと付き合ってるって公言したのは、きっと他の男性社員を春川さんに近づかせないつもりだったんじゃない?」

「へ、まさか」

「そうよ、課長が『俺の女だ』みたいに言った女子社員には絶対、手を出しにくいでしょう。牽制ね、きっと」
佐野さんは、納得したように頷いて自分のデスクへ戻っていった。




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