《クールな彼は欲しがり屋》
「愛しい?」


「ああ、ずっと、あんたに会いたいと思ってたから、突然会えて気持ちが追いつかない。俺には珍しく空回りしっぱなしで、どうしても手に入れたいのに....やたら苦労してる」

どうしても手に入れたいって私のことだろうか。

「手に入れたら、すぐに飽きるんじゃ?」

「それは、どうかわからないが、俺は今、自分にこうして戻ってきた熱い冬が嬉しくて堪らない。そのくせ、相手に伝わらない思いがつらい」

沢田課長の瞳は、まっすぐに私を見つめている。真剣に見える瞳は、直視できないほどに輝いていた。

「いや、でも、だって、沢田課長。沢田課長みたいな人がたった1日しか会っていない私なんかにこだわるのが信じられないです」

ため息を長くついた沢田課長に、なんだか知らないが胸がきゅんと締め付けられた。

「俺を信じられないなら、やっぱり俺と付き合え」

「え?」

「付き合って信じられる男かどうか、きちんと自分の目で見極めろよ」

「変な理屈ですね。やっぱり騙されてるみたい」

「騙されてみろ。後悔は、させないから」

「はあ、いや、無理ですって。沢田課長と付き合うなんて」

付き合った経験のない女が、初めて付き合うにしたら、沢田課長って人は、かなりレベルが高い部類だ。いろんな意味で振り回されそうで怖い。



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