《クールな彼は欲しがり屋》
「いい歳をして彼氏がいないなんて恥ずかしくないか」
「特に感じませんから」
「わかった。もしかして、また怖いのか?」
「え?」
「初めてなんだから、怖くて当たり前だよな。それなら」
沢田課長は手を伸ばしてきて私の手を握った。
「順序を守ってやる」
「は?」
「あんたが怖くならないように順序正しく付き合って行こう。それならいいだろ。これ以上は譲歩不可能だ。ちなみにこんなに譲歩してやるような男は、この先俺以外に現れないだろうな」
決めつけたように言う沢田課長。
「そんなこともないと思いますけど....」と言いつつ、悔しいけど、沢田課長の言うとおり、この先、どうかんがえても沢田課長みたいにレベルが高い男が私に言い寄って来る可能性なんかゼロに近いような気がしていた。
「手を繋ぐことから始めよう。幼稚園児でも同じ組の奴と手ぐらい繋ぐだろ。そんな風に考えろ。俺たちは、同じ営業組なんだから」
営業組って何だろう。
それにしても、沢田課長は、さすが営業課長だ。ぐいぐい来るなぁ。
握られた手に緊張から汗が滲む。
「手汗が。一度離してください」
「どうせ、また繋ぐんだ。拭いても意味ない」
握られた手をじっと見ていたら、沢田課長が指を動かし貝殻繋ぎにして、それぞれの指の間に沢田課長の長い指が収まった。