《クールな彼は欲しがり屋》

「!こんな繋ぎ方、恥ずかしいですって」

オフィスで、ごちゃごちゃやることじゃない。

「順序は、ちゃんとしてるだろ。さっきは普通の繋ぎ方。今は恋人繋ぎ」


「順序は、合ってますけどペースが速くないですか?」

「キスまではペース速めても問題ないだろ。実際、キスは済んでる仲だからな」

「沢田課長!勝手に進めないでください」

「わかった、わかった」

沢田課長は、椅子から立ち上がると同時に私の手を離した。


「ポッとすんな。早く立て。帰るぞ」

「は、はい」
コートに袖を通しボタンに手をかけると、沢田課長がその手を制して

「しめてやるから、あんたは、マフラーでも巻いとけ」

言われた通り、私がマフラーを首に巻く間に沢田課長が私のコートのボタンをはめてくれた。

「ありがとうございます」

「いや、待つのよりずっとましだ。あんた、なんでも遅そうだからな」
さすがにムッとした。

遅そうって、ボタンをはめるのに遅いも速いも大差ないでしょうに。


沢田課長は、やっぱり短気だ。

短気な人は苦手なのに。

じろりと見上げると沢田課長が、澄まし顔をして私を横目で見た。

「ほら、速く掴め」

沢田課長が腕を曲げ私の方へ肘を近づけてきた。

「え、なんですか?」

「腕、掴めよ」

もう、次の段階?

おそるおそる沢田課長の腕に手を置いてみた。
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