《クールな彼は欲しがり屋》

「じゃあ、明日」

キスをしてすぐに沢田課長は、タクシーに乗り込んだ。

わざわざキスするためにタクシーを降りてきたんだぁ。妙なところに感心していた。

沢田課長を乗せたタクシーは、わざとみたいにゆっくり走りだし、さんざん私に後ろ姿を見せてから、ようやく左のウィンカーを出した。

やっと、消えてくれた。

タクシーが見えなくなって、ほっと息をついた。

ほんとに今日も目まぐるしいだけじゃなくツイテナイ1日だった。

営業に異動してきてから、全然心が休まらない。それどころか、一年前の男により、ぐちゃぐちゃにかきまわされている。

何が順序よ。

短気だから、ペースが速すぎる。

言いくるめられた感じで付き合うとなってから、まだ数時間しかたっていないのに、手を繋ぎ、すぐに恋人繋ぎになり、あげくにキスだ。

怖いくらいにペースが速すぎる。

これだと、本当にリベンジの機会がすぐにやって来そうだ。

私は、夜空を見上げ白い息を一気に吐き出していた。

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