《クールな彼は欲しがり屋》
「良かった?なんでよ」
「やっと、新しい男が出来たって話でしょ。しかもイケメン上司」
なんて、能天気なんだろ。私が困っているって話をしてるのに、葵は全然わかってない。
「良かったじゃない。一夜限りの関係にならなくて」
「だから、あの夜は、最後までいってなくて」
「いってない?やだ、究極の下ネタ?慶子も、そんなことを話せるくらいに成長したんだぁ。その上司のおかげじゃん」
「は?ち、ちょっと、なんか誤解してない?してるよね?絶対」
葵は、絶対によからぬ方へ話を誤解しているっ。
「ま、もう一年もたったんだから、いい加減新しい恋を始めなさいよ、ね?」
「簡単に言わないでよ。まだ、なんにも知らないし、むしろ何考えてるかわからないタイプだし。つめたそうだし」
「はいはい、わかった。慶子は、保守的過ぎるよ。いーい、人生なんて一度しかないの。わかる?悩んでる暇なんか無いわけ。悩んでも無駄だから」
「無駄って」
「無駄、無駄。先のことは、誰にもわかんないの。悩んでみたところで、わかるわけないの。付き合う方がいいか悪いかなんて、考えてもわかんないから。頭の中と現場は、まるで違うのよ」
「現場って....」
昔流行った刑事ドラマのセリフみたいだ。
「いーい、出会い方とか、上司だとか、最後までいってないとか、いけたとか....頭で思う理想の恋愛の形に実際の恋愛を当てはめようと思ってるうちは、本当の恋愛なんか出来ないんだからね」