《クールな彼は欲しがり屋》
「おはよう春川」
「お、おはようございます」
挨拶するだけで緊張しまくっていた。
「なんだ?そのぎこちない態度」
「え?そうですか?別にいつも通りです」
「ふーん、それなら、春川は、いつも変なんだな」
「そ、そんなことはありません。いつも変だなんて....」
「怒ってんのか?割と短気だな」
短気?
笑っちゃう。自分の方が余程短気なくせに、自分では気がつかないのかな?
「春川」
呼ばれて沢田課長の方に向いた私は
「わわっち」
と、訳のわからない声をあげていた。
唐突に頬に押し付けられた温かいペットポトル。
「ココアだ。好きなんだろ?」
「え?は、はい」
出勤前にココアを買ってきたのだろうか。飲み物なら、上の自販機で買えばらくなのに。
渡されたペットボトルは熱いというほどではなく、丁度よい温かさだ。
エレベーターが来て、待っていた人たちと一緒に私と沢田課長も乗り込んだ。
乗り込みながら、ふと気になった。
沢田課長は、コートらしきものを着ていないのだ。ダークグレーの細身なスーツ姿だ。
今出勤してきたんじゃないのかな?
でも、どうして、下にいたんだろ。