《クールな彼は欲しがり屋》
「また、売り切れてますね。みんなココアが好きなのか。いつもココアだけ売り切れてて....」
沢田課長の足がピタリと止まった。
「しょっちゅうだから。私なんか、どうしてもココアの気分の時はコンビニまで行かなきゃ行けなくて、ははっ」
振り返った沢田課長。
「今日は、ツイテました。課長がココアをくれたのでコンビニへ行かなくてもよくなって....あれ?」
私は、手にしていたペットボトルを眺めた。
この階にペットボトルの自販機はない。
ならば、課長はコンビニで買ってきたのだろうか。
「課長、もしかして、これ。コンビニで買ってきたんですか?」
「....ついでにって言ったよな?」
目尻を釣り上げている。眉毛がピクピクしているように見えたが、気のせいだろうか。
「ココアを買うついでにコンビニで用事も済ませたと?」
「ちがう。コンビニに寄ったついでにココアを買ったんだ」
少しの言葉の違いに、やけに敏感だ。
私は、沢田課長の身体の周りをじろじろとみた。
「コンビニに何のご用事で?」
「は?なんでそんなことをいちいち部下に報告しなきゃならないんだ?」
「出勤の途中でコンビニへ言ったんですか?」
「そうだ。出勤途中にコンビニによるのが悪いか」
「いえ、出勤の途中に寄った割には....ずいぶんと身軽ですね」
ハッとした顔をして、沢田課長は自分の身体を見おろした。
「ちっ」
舌打ちをした沢田課長は、私の前に近づいてきた。