《クールな彼は欲しがり屋》
「何年、この仕事をやってんだよ。誤字脱字さえも見直す暇が無いわけ?」
和泉さんが、私をかばって怒られるなんて耐えられない。自分のしでかしたミスは、最後まで自分で責任を持つべきだ。
付き合っているから特別扱いされてるなんて、周りには思われたくない。それに、沢田課長も仕事には厳しい人だ。
私情を挟み、私を特別扱いして怒らないとか、そんなことはしない人のはずだ。
沢田課長のデスクの前にたち、和泉さんの隣に並んだ。
「沢田課長!その資料は和泉さんから割り振られて私が作成しました」
姿勢を正して、まるで自衛隊みたいな感じで威勢よく申し出た。
「....この資料を春川が?」
座ったままで驚いたように沢田課長が私を見上げた。
「はいっ!どこが悪いか教えてください。誤字脱字も正して作り直します」
教えてもらえば、私でも出来る。
じっと見られていた。沢田課長は、私を見てから和泉さんを見た。
「ふーん、そう。これを春川がねー」
面白くなさそうに沢田課長は言って背もたれに身体を預けた。
「和泉さんは営業に来たばかりの私をかばってくれただけです」
私は身を乗り出して弁明した。
すると、隣にいた和泉さんが、
「あっ、あのね、違うよ、春川さん。これは、プレゼンの資料で春川さんがまとめてくれた資料じゃないよ」
と、小声で教えてくれた。
「え?」
「僕が作った奴だから春川さんは関係ないよ」
「え?そうなんですか?」
うんうんと頷く和泉さん。